何度かやったことのある作業でも、少し時間が空くと、細かいところが分からなくなることがあります。
どの画面を開くのか。どの順番で進めるのか。何を確認できたら終わりなのか。毎月やっていることでも、次に取りかかる頃には意外と曖昧になっています。
以前はマニュアルというと、誰かに仕事を引き継ぐために作るものだと思っていました。けれど今は、自分があとで迷わず動くためにも必要なものだと感じています。
私は普段、事業運営のサポートやデジタルまわりの仕事をしているのですが、これまでの仕事でも、人によって作業の進め方が違ったり、担当者しか分からないことが残っていたりする場面を数多く見てきました。現在は自分の作業についても、記憶だけに頼らず進められるよう、Googleスプレッドシートでマニュアルを作っています。
大切にしているのは、立派な資料を作ることではありません。次に開いたとき、考え直さなくても作業を始められることです。
マニュアルは誰かに渡すためだけではない
毎日使う機能や、何度も繰り返す作業は、自然と手が動くようになります。私もGoogleカレンダーやGoogle ToDoリスト、Google Keepは普段からよく使うため、基本的な操作に迷うことはあまりありません。
それでも、「予定をどの種類に分けていたか」「このメモはどこへ置くと決めたか」のような運用上のルールは、時間がたつと曖昧になります。そこで、機能の説明ではなく、自分がどう使うかをマニュアルに残しています。
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特に役に立つのが、月末の会計処理のように実施する間隔が空く作業です。
仕訳の方法だけでなく、どこの数字を見て確認するか、数字が合わない場合は何を疑うか、どの状態になれば処理を終えてよいかまで書いておくと、前回の記憶をたどりながら進める必要がありません。
今は自分で処理をしているので、目で確認しながらでも進められます。それでも、手順や判断基準を残しておけば時間が空いた自分への引き継ぎになりますし、将来ほかの人が担当することになったときの土台にもなります。
操作だけでなく、判断できるところまで書く
マニュアルを作るときは、操作の順番だけを書けばよいように思えます。
けれど実際に迷いやすいのは、「次にどこを押すか」よりも、「この状態で合っているのか」「ここまで進めてよいのか」という判断の部分です。
そのため、私は当たり前に見えることも、できるだけ省かないようにしています。
たとえば会計処理なら、次のような内容です。
- どの画面や資料を開くか
- どの期間を対象にするか
- 何と何を照合するか
- どの数字が一致すればよいか
- 一致しない場合に確認する場所
- どの状態になれば完了か
同じ作業に慣れている人には細かすぎるように見えるかもしれません。ただマニュアルが必要になるのは、内容をよく覚えているときとは限りません。久しぶりに作業するときや、忙しくて余裕がないときほど、書かれている情報が助けになります。
方針や用語の定義、記入例もあると便利です。ただし、情報を増やすこと自体を目的にはしません。「これを見れば、自分で次の判断ができるか」を基準に必要な内容を残します。
基本は3つのタブに分ける
すべてを一つのページに詰め込むと、情報量が多くなり、作業中に必要な箇所を探しにくくなります。一方で、細かくタブを分けすぎると、今度はどこを見ればよいのか迷います。
そこで、基本は次の3つに分けています。
「概要・ルール」には、目的、対象、実施するタイミング、用語や分類の定義、基本方針をまとめます。
「手順」には、実際の操作、確認する場所や数字、判断基準、チェック欄、注意点をまとめます。
「変更履歴」には、更新日、変更した内容、変更した理由を残します。
画面画像や具体例、例外の説明が増えたときだけ、「補足・事例」のようなタブを追加します。
最初から完成形を予想して、たくさんのタブを用意する必要はありません。基本の3つから始めて情報が増えたときに役割ごとに分ける。そのくらいの方が、1ページの情報量を抑えながら全体も見失いにくいと感じています。
分ける基準は情報の種類が違うかどうかです。似た内容まで別々にせず、作業するときに一緒に見るものは同じ場所へまとめます。
チェック欄は、繰り返し使える形にする
定期的な作業の手順には、Googleスプレッドシートのチェックボックスを使っています。
作業が終わった項目にチェックを入れると、取り消し線がついたり、セルの色が変わったりするようにしておくと、どこまで終わったかをひと目で確認できます。中断しても再開しやすく、項目の飛ばし忘れも減らせます。
すべて完了した後は、チェックを一括解除して、次回また同じ状態から使えるようにしています。Google Apps Scriptを使えば、確認画面を表示したうえで、指定した範囲のチェックをボタンからまとめて外すこともできます。
ただし、チェックを解除すると前回の完了状態は残りません。今のところは、同じ手順を繰り返すためのチェックリストとして使っていますが、誰がいつ実施したかまで必要になれば、月ごとにシートを複製したり、別に実施記録を残したりする方がよいと思います。
仕組みを複雑にしすぎず、今必要な確認と、将来必要になる記録を分けて考えるようにしています。
迷ったときが、マニュアルを直すタイミング
マニュアルは一度作って終わりではありません。実際に使うと、作成時には気づかなかった分かりにくさが見つかります。
「作業なのか事務なのか迷った」「どこへ記入するのか忘れた」「この数字が合わないときの確認先が書かれていなかった」。そうした小さな迷いは、マニュアルに足りない情報を教えてくれます。
私は、気づいたときにその都度、時間を取って直すようにしています。後でまとめて更新しようとすると、どこで迷ったのか、なぜそのルールに変えたのかを忘れてしまうからです。
変更した内容と理由は、「変更履歴」に残します。現在の正しい手順は本文へ反映し、以前の内容を本文の中に残し続けないようにします。過去の経緯は変更履歴で確認できるため、普段使う手順を読みやすい状態に保てます。
最初から完璧なマニュアルを作ろうとするより、使いながら不足を足し、不要なものをまとめる。その方が、実際の運用に合ったものへ育っていきます。
すぐ確認できる場所まで整えておく
マニュアルを書いても、必要なときに見つけられなければ、結局は記憶に頼ることになります。
私はGoogle Driveの「01_管理」にマニュアル用のフォルダを作り、そこで管理しています。また、Googleサイトで作っている社内サイトから、マニュアルやよく使うシートを開けるようにしています。
ファイルを置く場所と入口を決めておくと、「マニュアルがあったはずだけれど、どこだったか」と探す時間を減らせます。今はAIへ情報源として渡しておけば、必要なルールや手順を質問して確認することもできます。
ただし、保存場所や仕組みを増やしすぎると管理するものまで増えてしまうので、まずは一か所にまとめ、よく見る場所からリンクするくらいでも十分です。
マニュアルを作る目的は、細かい決まりを増やすことではありません。
久しぶりの作業でも、どこから始めればよいか分かること。途中で迷ったとき、自分で判断できること。作業が終わったあと、必要な確認を済ませたと分かること。
そのために必要な「当たり前」まで書き、使いながら少しずつ整えていく。自分の記憶に任せていたことを外へ出しておくと、次に同じ作業をするときの負担が、思っていた以上に軽くなります。
